血液内科

血液内科について

血液は、酸素を運搬する赤血球、細菌やウイルスなどの病原体と戦う白血球、出血を止める血小板や凝固因子などで構成されています。
これらは生きていくために不可欠のものです。血球等の数が減少し、または機能が低下すると、命にもかかわる危険な状態にもなりかねません。
血液内科は、このような重要な役割を担っている血液の病気を扱う診療科です。

血液内科でよくみられる症状

貧血

赤血球の中の赤い組織であるヘモグロビンは、肺で取り込んだ酸素を全身の細胞に供給する大切な役目を担っています。このヘモグロビンが少なくなってしまい、全身に十分な酸素を供給できなくなってしまった状態を貧血と言います。 貧血を招く疾患には様々なものがあります。

・けがや病気で血管が破れて出血することが原因で起こるもの(出血性貧血)
・ヘモグロビンをつくるための材料である鉄やビタミンなどの欠乏から起こるもの(鉄欠乏性貧血、巨赤芽球性貧血)。
・赤血球は骨髄でつくられ、約120日間の寿命がありますが、これが途中でこわれて溶けてしまうことがあり、これにより赤血球の生成が追いつかなくなってしまうこと(溶血性貧血)。

これらの他にも、いくつかの型の貧血が知られています。主な症状としては、めまい、立ちくらみ、動悸、息切れ、疲れやすいなどがあります。 診断は主に血液検査によって行われますが、必要によっては原因を詳しく調べる必要が出てきます。 治療法は、原因を取り除くことですので、原因が何かによって異なってきます。

血小板の異常

血液中の血小板は、血管が破れて出血すると、破れた箇所に集まって固まり、出血を止める働きをしています。
血液中の血小板数が著しく低下すると、出血をきたしやすくなります。逆に、数量が著しく多くなると、今度は血液が固まりやすくなり、血液が固まってできた血栓が血管をふさいで脳梗塞や心筋梗塞などを発症する危険性が高くなります。また、血小板の機能が異常となり、数量があっても止血効果が小さくなることもあります。
こうした血小板の異常な増減や凝集能力の異常には、その陰に重い疾患が隠れていることも少なくありませんので、血液内科で精密検査を受けることが大切です。

白血病

血液の製造工場である骨髄において異常な細胞(白血病細胞)がどんどんつくられる疾患で、「血液のがん」とも呼ばれます。異常な細胞が体の様々な臓器にダメージを与えるとともに、骨髄ががん化した細胞を生み出すばかりになって、正常な血球をつくれなくなります。
すると、体中に酸素を運ぶ赤血球が減少して、だるさ、息切れ、動悸といった症状が起こりやすくなります。白血球の減少では、外から侵入してくる病原体への抵抗力が下がり、肺炎などの感染症にかかりやすくなります。血小板も減少するため、血が止まりにくくなって鼻出血や歯茎からの出血を起こしたり、何もしていないのにあざができたりします。また、異常な細胞が集まることで肝臓や脾臓(血液を貯蔵する臓器)などが肥大したり、骨の痛みが起こったりすることもあります。
原因についてですが、抗がん剤や放射線などの治療後に起こる「二次性白血病」もありますが、大部分の白血病は原因不明です。診断にあたっては、血液検査や骨髄検査を行います。
主な種類として、急性白血病と慢性白血病があります。急性白血病は、診断が確定したら、早急に抗がん剤などによる治療を開始する必要があります。慢性白血病は白血病細胞がゆっくり増加するため進行スピードが遅く、初期症状はほとんどありません。多くの場合、健康診断やほかの病気の検査として血液検査を行った際に、白血球の数などに異常がみられて発見されることが一般的です。速やかに異常に気付けるよう定期的に検診を受けることが必要です。

悪性リンパ腫

悪性リンパ腫は、リンパ系の組織から発生する腫瘍(がん)です。
リンパ系組織とは、ヒトの免疫システムを構成するもので、リンパ節、胸腺、脾臓、扁桃腺などの組織・臓器、リンパ節をつなぐリンパ管、およびその中を流れるリンパ液から成ります。リンパ系組織を構成する主な細胞は、リンパ球という白血球の一種です。
症状としては、リンパ節の腫れ、特にくび(頸部:けいぶ)やわきの下(腋窩:えきか)、足の付け根(鼠径部:そけいぶ)などのリンパ節に腫れやしこりがよく見られますが、リンパ系組織は全身に分布しており、リンパ球は血流に乗って流れていく性質があるため、リンパ腫の病変は全身のあらゆる臓器に発症する可能性があります。
リンパ節の腫れは、痛みを伴いません。全身的な症状として、発熱、寝汗、体重減少を伴うことがあります。これら3つの症状を「B症状」と言い、重視されます。その他、皮膚の発疹、様々な場所のしこりや痛みで発見されることもあります。
原因は、リンパ球の中でおこった遺伝子の異常により、リンパ球の寿命や増え方に異常がおこることなどが一因と考えられています。また、リンパ腫のなかには、成人T細胞白血病リンパ腫のようにウイルス感染したリンパ球からおこるものがあるほか、免疫不全が原因となっておこるものもあります。診断にあたっては、血液検査、画像検査(CT、MRI、PETなど)、骨髄検査、リンパ節生検などが行われます。悪性リンパ腫の治療はそのタイプと進行度に応じて、経過観察、放射線療法、化学療法(抗がん剤)、造血幹細胞移植などが行われます。

骨髄異形成症候群

骨髄異形成症候群は、赤血球や白血球、血小板といった血液中の細胞が減少する病気です。自覚症状がないことも多く、健康診断などから偶然発見されるケースも少なくありません。
急激に病状が進行するわけではありませんが、白血病に移行するタイプでは早期治療が必要となることもあるため、適切な治療や経過観察を続けていくことが大切です。速やかに異常に気付けるよう定期的に検診を受けることが必要です。

骨髄増殖性疾患

「骨髄増殖性疾患」は、骨髄の中で作られるはずの赤血球や白血球、血小板といった血液細胞が、骨髄の働きが異常になったために過剰に生産されてしまう病気の総称で、代表的な疾患として、「真性多血症(真性赤血球増加症)」、「本態性血小板血症」、「原発性骨髄線維症」が挙げられます。
真性多血症は主に赤血球が増える疾患であり、本態性血小板血症は主に血小板が増える疾患です。自覚症状がないことも多く、健康診断で赤血球数や血小板数が高いことを指摘されて診断されたり、脳梗塞などを発症した際に偶発的に見つかることもあります。これらの疾患は比較的良好な経過をたどりますが、急性白血病や骨髄線維症に移行することもあり、経過観察が必要です。また、心筋梗塞、脳梗塞、下肢の静脈血栓症や肺塞栓などの血栓症を発症するリスクが高くなるため、そのリスクに応じて治療介入が必要となります。
原発性骨髄線維症は血液を作っている骨髄の中で線維が増えてしまう疾患です。そのため、骨髄で正常な造血ができなくなり、脾臓や肝臓など他の臓器で血液が造られ(髄外造血と言います)、その結果、脾臓や肝臓が腫れてしまうことがあります。だるさ、かゆみ、体重減少などの全身の症状を伴うこともあります。真性多血症や本態性血小板血症と比較して、生命にかかわるリスクが高い疾患であり、病気の進行度に応じた適切な治療法を選択することが重要になります。速やかに異常に気付けるよう定期的に検診を受けることが必要です。

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